【キャリアガイド】第1部:理想の仕事とは?60以上の研究を調査した我々の結論

人間、誰しも楽しくて有意義な仕事を望むものだろう。だがそれは一体どういう意味なのだろうか?
ある人にとっては、ふとしたきっかけで自分の情熱を見つけることかもしれないし、違う人にとっての理想の仕事の重要点は楽で高給であることかもしれない。
満足のいく人生及びキャリアの要因について、我々は過去30年にわたる60以上の研究を検討してみたが、これらの意見を裏付ける根拠は見つからなかった。
その代わり、理想の仕事の鍵となる6つの要素を見つけた。収入は含まれないし、かといって「情熱に従え」ほど単純なものではない。
むしろ、情熱に従うと道を踏み外すこともある。スティーブ・ジョブズはテクノロジー界に入る前は禅宗に熱中していた。マヤ・アンジェロウは著名な詩人及び公民権運動家になる前はカリプソダンサーとして働いていた。
そうではなく、自分が楽しくて有意義だと思える仕事をすることで情熱を育むことができる。重要なのは、人の役に立つ何かを得意にすることだ。
この動画(英語のみ)、あるいは本文の記事(日本語訳)(所要時間20分)を読んでいただきたい。原典となる研究結果のみ知りたい場合は、エビデンスレビューを参照。
理想の仕事を見つけるには、以下に注意すること:
通常、自分にとっての理想の仕事を見つけ出そうとするとき、人々は様々な仕事とそれぞれの満足度を想像することが多い。あるいは、過去に充実感を感じた時のことを思い浮かべて、自分にとって重要なことは何かと自問するかもしれない。
もしこれが従来のキャリアガイドなら、あなたが仕事に求める最も重要な要点のリストを書かせることから始めるだろう。「屋外で仕事する」とか「野心的な人と働く」など。ベストセラーとなったキャリアアドバイス本『What Color Is Your Parachute?』(邦題『あなたのパラシュートは何色?』)は、まさにこれを勧めている。これは、誰しも心の底では自分が本当に望んでいるものを知っている、という期待に基づいている。
だが研究によると自己反省は有益ではあるものの、完璧ではないということが分かっている。
例えばあなたの人生においても、休暇だかパーティーだか、何かをすごく楽しみにしていたのに、実際に起こってみるととまぁまぁだった、ということがあるだろう。ここ数十年の研究で、このようなことはよくあることだということが明らかになった。我々は、自分が何に最も幸せを感じるのかを予測するのが必ずしも得意ではないし、自分がどれほどそれが下手なのか気付いていないのだ。脚注に、この研究の概要がいくつか掲載されている。
我々は色々な体験の満足度を思い出すこと自体苦手であることも明らかになっている。我々が犯す間違いの一つとして科学的に確かめられていることだが、我々はしばしば経験を主にその結末で判断してしまう:楽しい休暇の最終日に飛行機に乗り遅れた場合、おそらくその休暇は最悪なものだったと記憶されるだろう。
ある経験から得られる快をその結末で判断することがしばしばあることで、我々は興味深い選択をさせられることがある。
Dan Gilbert 教授「Stumbling on Happiness」(邦題『明日の幸せを科学する』)より
つまり直感は頼りにならない、自分に最適な仕事を見つけるにはより体系的な方法が必要、ということになる。
いかに我々が自己反省が苦手かを実証する同じ研究から、より情報に基づいた選択をする方法を学ぶことができる。現在、30年にわたるポジティブ心理学(幸せの科学)や、数十年に及ぶモチベーションや仕事の満足度に関する研究が存在する。これらの研究の主なる教訓を要約し、充実した仕事を見つけることへの関連点を説明したいと思う。
人々はよく、理想の仕事とは高給で楽なものだと考える。
2015年、CareerCastが提供する、アメリカ最大の職業ランキングの一つは、職業評価する際、以下の基準を用いた:
これらの基準によると、最高の仕事は保険数理士らしい。つまり、主に保険業界において、統計を用いてリスクの測定と管理を行う者だ。
確かに、数理士が自分の仕事に満足している割合は平均値よりも高い。だが、最も満足している職業のひとつ、というわけではない。自分の仕事は意味あるものであると答えた者はたった36%であったことから、数理士はそれほど充実感を伴うものではないことが分かる。
よってCareerCast のリストは何かを捉え損ねている。むしろ、給料とストレスの回避はそれほど重要ではないことを示唆するエビデンスが存在する。
お金で幸せは買えない、とよく言うが、同時により高い給料というのは求職者における最優先事項の一つでもある。また、自分たちの生活の質を最も上げるであろうものは何か、と問われると、一般的にお金と答える人が最も多い。
これはどういうことだろうか?正しいのはどちらだろうか?
この問題に関する研究の多くは、驚くほど質が低い。だが経済学における幾つかの主要な研究は、より明確な結果を示している。現在存在する中で最も質の高い研究を検討した結果、答えは中間にあることが判明した:いわく、お金は幸せをもたらすが、それはほんの少しである。

人生の満足度を1から10のスケールで評価するよう人々に聞いた。結果は図の右側にある。下は世帯収入だ。
見ての通り、40 000ドルから80 000ドルへ(税引前)収入が倍増しても、人生の満足度はおおよそ10点中6.5点から7点までしか増えない。こんなちっぽけな増加に対して、随分と収入を増やさなければならないのだ。
これは驚くことではない。誰しも周囲に、高給職に就いておきながら惨めな人生を送っている人を知っているはずだ。
しかしこの結果は楽観的すぎるかもしれない。その日その日の幸福からすると、収入の重要性はより低いものになるだろう。「ポジティブ感情」とは、前日に幸福を感じたかどうかに対する答えだ。下のグラフの左軸は、この問いに「はい」と答えた人の割合を示している。調査結果によるとこの線は5万ドルあたりで横ばいになっており、この点を超えると、収入は日々の幸福感と関係がないことを示している。

この図は、前日に「憂鬱にならなかった」「ストレスがなかった」と答えた人の割合を示した図と酷似している。

これらの線は75 000ドル以降は完全に平たくなる。つまりこの点を超えると、収入は人々の喜び、悲しみ、ストレスに関連しなくなるのだ。
我々は、この結果が誤りである可能性も十分にあると考えており、日々の幸福感は収入に応じて少なくとも多少は増加し続けると考えている。
より最近の研究では、日々の幸福感は生活満足度よりも緩やかに増加するものの、まさにこのことを証明している。
上記で取り上げたことは全て、収入と幸福の相関関係についてのみである。だが、この関係は第三の要因によって引き起こされているかもしれない。例えば、健康であることは幸福度を高めると同時により多くの収入を得ることに繋がっているかもしれない。もしそうだとすれば、余分にお金を稼ぐことの効果は、上記の相関関係から推測されるよりもさらに弱くなるだろう。
最後に、75 000ドルの世帯収入は子どもがいない場合、40 000ドルの個人収入と等価だ。
これらの目安を自分用にカスタマイズするには、以下の調整を行う(すべて税引前)
2023年の時点では、米国の平均的な大卒者は、職業生活を通じて年間約 77 000 ドルの収入が期待できる。一方、平均的なアイビー リーグ卒業生の収入は 120 000 ドルを超える。 結論から言えば、あなたが米国 (または 同様の国)の大学卒業生の場合、収入が増えても幸福度にほとんど影響を与えないグループに入ることになる可能性が高い。
(このエビデンスについてもっと読む)

あまりストレスの溜まらない仕事を見つけたいと言う人はたくさんいる。過去には、ストレスは常に悪いものだと信じていた医者や心理学者がいたのは事実だ。しかし、ストレスに関する現代の文献を調査したところ、状況はもう少し複雑であることが分かった。
一つの謎は、政府や軍の高官を対象とした研究で、彼らの睡眠時間が短く、より多くの人を管理し、より高い職業的要求があるにも関わらず、ストレスホルモンのレベルが低く、不安も少ないことがわかったことである。広く支持されている説明の一つは、(自分のスケジュールを調整し、直面する課題にどう取り組むかを決定することで)より制御力を持ち、自分の地位の要求から身を守ることができるというものだ。
過酷な仕事の良し悪しを左右する要因は他にもある:
| 変数 | 良い(あるいは中立) | 悪い | |
|---|---|---|---|
| ストレスのタイプ | 要求の高さ | 挑戦し甲斐があり達成可能 | 能力に釣り合わない(簡単すぎるか難しすぎるか) |
| 期間 | 短期 | 継続的 | |
| 職場環境 | 裁量権 | 与えられた裁量権が多く自律性が高い | 裁量権が少なく自律性が低い |
| 権力 | 大きな権力 | 小さい権力 | |
| ソーシャルサポート | 優れたソーシャル・サポート | 社会的孤立 | |
| 対処法 | マインドセット | 要求を機会と、ストレスを有益なものと捉える | 課題を脅威と、ストレスを健康に害をなすものと捉える |
| 利他主義 | 利他的な行為を行う | 自分のことのみ考える | |
つまり状況は次の図のようになる。とりわけ要求の低い仕事は悪い、つまり退屈だ。自分の能力を超えた仕事も悪い:余計なストレスになる。ちょうどいいのは自分の能力に合った要求が課される場合だ。これはやりがいのあるチャレンジとなる。

ストレスを避けるのではなく、支えとなる職場環境とやりがいのある仕事を探して、自分をチャレンジしてみよう。
(詳しくはストレスに関するエビデンス調査を参照)

我々は、充実した人生を実現するものについてのポジティブ心理学の研究を応用し、職務満足度に関する研究と組み合わせて、理想の仕事を構築する6つの重要な要素を導き出した。(エビデンスをさらに詳しく知りたい方は、エビデンス調査を参照)
以下が6つの要素である。
真に大事なのは給料でも、ステータスでも、会社の種類でもなく、毎日何時間も何をして過ごすかである。
関心が持てる仕事とは、引き込まれ、注意を引き付け、フロー状態の感覚を得られる仕事のことである。スプレッドシートの編集に1時間費やすと退屈にしか感じないのに、コンピューターゲームで1時間遊んでも時間が流れたように感じないのはそのためだ。コンピューターゲームはプレイヤーの関心を出来るだけ引き付けるように設計されている。

違いは何か?なぜコンピューターゲームには関心が持てて、オフィス事務には持てないのか?研究者は4つの要素を特定している:
これらの各要因は、主要なメタ分析で職務満足度と相関することが示されており(r=0.4)、職務満足度の予測因子として経験的に最もよく検証されていると専門家の間では広く考えられている。
とはいえ、コンピューターゲームで遊ぶことは充実した生活の決定因子ではない(単に給料が出ないということはさておき)。他にも必要なものがある。例えば…
以下の仕事は、我々が挙げた関心の持てる仕事の4つの要素を備えている。だが、 これらの仕事に就いている4分の3以上の人が、その仕事に意義を見出せないと答えている。
以下の仕事は、その仕事をするほとんど全ての人にとって有意義なものとされている:
主な違いは、二つ目のカテゴリーは人のためになるとされている仕事であることである。だからこそ有意義であり、だから人のためとなることを(理想の仕事を構成する)2つ目の要素と見なした。
人のためとなることが人生の満足度の重要な要素であることを示すエビデンスは増えている。ボランティアをする人は憂鬱になることが少なく、より健康である。23 件のランダム化研究のメタ分析では、親切な行為を行うとそれをした人がより幸せになることが示されている。また世界的な調査では、慈善活動に寄付する人は、2 倍稼いでいる人と同じくらい自分の人生に満足していることが分かった。
人のためとなることは有意義なキャリアへの唯一の道ではないが、最も強力な手段の一つとして研究者の間では広く受け入れられている。
(ガイドの次の章では、直接的にであれ間接的にであれ、本当に人のためとなる仕事を紹介している)
自分の仕事が得意であると、達成感という、ポジティブ心理学によると人生の満足度の鍵である要素が得られる。
また、やりがいのある仕事の他の要素を得るための交渉力も得られるー有意義なプロジェクトに取り組んだり、関心の持てるタスクを受け持ったり、公正な報酬を得ることができる力だ。周囲にあなたの貢献が認められれば、見返りにこれらの条件を求めることができる。
これら二つの理由からして、最終的にはスキルは興味に勝る。たとえ芸術が好きでも、それを仕事として追及しながら特別上手くない場合、どうでもいい会社のつまらないグラフィックデザインをすることになってしまう。
だからといって自分が得意な仕事しかできないというわけではない。だが、得意になる見込みがあれば望ましいというわけだ。
(ガイドの後半は自分が得意な分野を見つける方法と、自分のスキルの開発に投資する方法についての記事もある)
当然のことだが、嫌いな同僚や非道な上司の下で働いていれば、満たされる余地はないだろう。
良い社交関係は充実した人生の要である。よって少なくとも職場の同僚数人と親しくなるのは大事である。そしてこれはおそらく、少なくとも二、三人の、自分と似た人間と働くことを意味するだろう。
だからといって全員とお友達になる必要はないのはもちろんのこと、同僚全員を好きになる必要もない。研究によれば、おそらく最も重要な要素は、問題にぶつかったときに同僚から助けを得られるかどうかである。大規模なメタ分析によると、「ソーシャル・サポート」は仕事満足度の上位予測因子のひとつであった(r=0.56)。
いけ好かない、あなたとは異なる人こそ、(あなたの利害に配慮してくれる前提の上)最も有益なフィードバックをくれる人かもしれない。ありのままに答え、違う視点を持っているからだ。アダム・グラント教授は、このような人々を「disagreeable givers」(いけ好かないギバー)と呼んでいる。
従来、理想の仕事について考えるとき、役職に焦点を当てることが多い。しかし、一緒に働く人も同じくらい大事である。夢のポジションも上司が最悪だと台無しになり得るが、うんざりする仕事も仲間となら楽しくなるかもしれない。よって仕事を選ぶとき、その職場で友達を作ることは可能かどうか、そしてもっと重要なことに、その職場のカルチャーは助けを得たり、フィールドバックをもらったり、一緒に仕事をしていきやすいものかどうかと問う必要がある。
充実を得るには、上記の全てが重要である。しかし、仕事が不快なものとなる要素がないことも重要である。以下は、仕事への不満に関連する傾向があるものである。
これらは当たり前のことと思えるかもしれないが、しばしば見落とされがちである。長時間の通勤がたらす悪影響は、他の多くのプラス要因を凌駕するほどである。
充実した人生のすべての要素を仕事から得る必要はない。お金になる仕事を見つけながら個人的なプロジェクトに打ち込んだり、慈善活動やボランティア活動を通じて意義を見出したり、仕事以外で素晴らしい人間関係を築いたりすることは可能だ。
我々はこういった人達を多く監修してきた。有名な例も多いーアインシュタインが最も生産的だった1905年、彼は特許事務所の事務員として働いていた。
よって最後の要素はキャリアがあなたの私生活とどう組み合うか考えることである。
次に移る前に、6つの要素の要約をここに記す。理想の仕事を探すポイントは:
(6つの要素を支えるエビデンスについて詳しく読む)
これら全部を合わせるにはどうすればいいだろうか?
「情熱に従え」(“follow your passion”)は、キャリアアドバイスの支柱となってきた。

要は、素敵なキャリアを見つけるには自分が最も興味のあること、つまり「自分の情熱」を見つけて、その興味に合うキャリアを追求する、という考えだ。実に魅力的なメッセージだ:情熱に全力を注ぐだけで、素晴らしいキャリアを築くことができる。また、成功している人達を見ると、彼らはしばしば自分のやっていることに情熱を持っている。
我々も、仕事に情熱を抱くべきというのには大賛成だ。上記の研究も、その仕事の内容そのものがやる気を起こさせるような仕事は、高額な給料よりもはるかに人々を幸せにすることを示している。
ただし「情熱に従え」というアドバイスが誤解を招く可能性がある場合が3つある。
一つ目の問題は、情熱さえあれば他はなにもいらないと示唆していることである。しかし、いくらその仕事に興味があっても、上記の6つの要素が欠けていればやはり不満を抱くだろう。バスケットボールのファンがバスケットボールに関係する仕事に就いたところで、同僚が嫌いだったり給与が不当だったり、仕事に意義を感じられなかったりすれば、依然として自分の仕事を嫌いになるだろう。
むしろ「情熱に従え」というのは6つの要素を満たす障害になるかもしれない。なぜならあなたが情熱を抱いている分野は最も競争が激しい可能性が高く、良い仕事を見つけるのが難しくなるからだ。

二つ目の問題は、多くの人にとって自分たちの情熱はキャリアに関連したものではないということだ。「情熱に従え」と提案しても、不適切に感じるかもしれない。「情熱」を持っていなくても、心配する必要はない。情熱を注げる仕事を見つけることは可能だ。
そして3番目の問題は、不必要に選択肢を制限してしまう可能性があることだ。文学に興味がある場合、充実したキャリアを得るには作家にならなければならないと考え、他の選択肢を無視しがちだ。また、自分の「唯一の真の情熱」は一目瞭然だと考え、ぱっと満足できない選択肢を排除することもよくある。
しかし実際には、新しい分野に情熱を抱くこともありうる。自分の仕事が他の人の役に立ち、上達するために努力し、やりがいのあるタスクに取り組み、好きな人達と一緒に仕事をすれば、その仕事に情熱を抱くようになる。6つの要素は全て、仕事の内容ではなく、仕事のコンテキストに関するものである。20 年前、我々はキャリアアドバイスに熱中するなど想像だにしていなかったが、今やこんな記事を書いている。
多くの成功した人々は情熱的だが、多くの場合、その情熱は成功を重ねるにつれ育んでいったものだ。当初から情熱的だったのではなく、その情熱を発見するまでに長い時間がかかった。 スティーブ・ジョブズは元々禅仏教に夢中だった。 手っ取り早くお金を稼ぐ方法としてテクノロジーに興味を持ち始めた。しかし、成功するにつれて情熱は増し、ついには「好きなことをする」ということの最も有名な提唱者になった。

実際のところ、我々の興味は 一つだけではないし、予想以上に頻繁に変わるものだ。 5 年前にあなたが最も興味を持っていたことを思い出してみてほしい。おそらく、それは現在あなたが興味を持っているものとはかなり異なっていることに気づくだろう。 そして、上記で述べたように、我々は、何をしたら自分が本当に幸せになるのかを知るのが苦手である。
これは、あなたが思っている以上に充実したキャリアの選択肢が存在することを意味する。
次に進む前にちょっとした余談だが、 このガイドが役に立ったと思った場合は、Twitter で記事を共有して、より多くの人に知ってもらえるよう協力して頂けると助かる。
充実したキャリアを実現するための当社のスローガンは、「情熱に従え」ではなく、「人の役に立つ何かを得意にする」だ。または単に*「貢献となることをしよう」*。
我々が「得意にする」ことを強調するのは、他者から評価されるような自分の得意なことを見つけられれば、キャリアを得るチャンスはたっぷりと得られ、他のすべての要素(関心が持てる仕事、支えとなる同僚、大きな欠点のなさ、私生活との相性)を備えた理想の仕事を見つける最高のチャンスが得られるからだ。
だが、他の5つの要素を全て持っていても、自分の仕事が無意味だと感じることはある。だから、人の役に立つ方法も見つける必要がある。
まず世の中に価値ある貢献をすることを優先すれば、自分の仕事に対する情熱を育むことだろう。そうなればより満たされ、野心的になり、やる気が出てくることだろう。
これは、私たちがキャリアアドバイスをしている中で発見したことだ。例えば、ジェスは学部時代に哲学に興味を持ち、博士課程に進むことを考えた。問題は、彼女は哲学を面白いと思っているが、その中でポジティブなインパクトを与えるのは難しいだろうということだった。結局のところ、これではやりがいがないと彼女は考えた。代わりに、彼女は心理学と公共政策に転向し、我々が知る中でも最も意欲的な人物の一人となった。
今日に至るまで、何千人もの人々が、我々のキャリアアドバイスに従うことで自分のキャリアパスを大きく変えてきた。その多くは、当初は興味がなかったものの、世界にとって重要だと信じた分野に転職した。スキルを磨き、一緒に働く良い仲間を見つけ、適切な職務を見つけたいま、彼らは深い満足感を得ている。
人の役に立つことを得意にすることに集中すべき理由は、さらに2つある。
他人を助けることを自分の使命としたら、周りもあなたの成功を手助けしたいと思うだろう。
当然のことのように聞こえるが、これを裏付ける経験的な証拠がある。 アダム・グラント教授は『Give and Take』(邦訳:『GIVE & TAKE「与える人」こそ成功する時代』)の中で、「与えるマインドセット」を持つ人こそが最終的に最も成功する人になると主張している。そういう人はより多くの支援を得られるから、そして目的意識によってより動機付けられているからだ。
注意すべき点は、与える人は他人にエネルギーを使いすぎて燃え尽きてしまうと成功しないということだ。 したがって、先ほど述べた仕事の満足度を高めるための他の要素や、与える量に制限を設けることも必要だ。
人を助けることが満たされるための鍵であるという考えは、決して新しいものではない。 これはほとんどの主要な道徳的および精神的伝統のテーマである。
善をなすことを心がけよ。 何度も繰り返せば、喜びで満たされるだろう。―仏陀 人間の真の富はこの世でなされる善行なり。―ムハンマド 汝の隣人を愛せよ。―イエス・キリスト 人間はだれでも、創造的な利他主義という光の道を歩むのか、それとも破壊的な利己主義という闇の道を歩むのか決断しなければならない。―マーティン・ルーサー・キング・ジュニア
さらに、次の記事で説明するように、今日の先進国の大学卒業生には、キャリアを通じて他の人を助ける大きな可能性がある。 結局のところ、これが他人を助けることに集中する本当の理由だ—それによって個人的により充実感が得られるという事実は、単なるおまけにすぎない。
理想の仕事に就くには、お金やストレスなどについて心配しすぎたり、自分の真の情熱を見つけるべく延々と内省し続ける必要はない。
それより、人の役に立つことを得意にしてほしい。 あなたにとっても、世界にとっても、それが最善だ。 これこそ我々が 80,000 Hours を設立した理由だ。我々の使命は、貢献できるキャリアを見つける手助けをすることである。
だが、人を助ける仕事はどれだろうか? 一人の人間が本当に大きな違いを生むことはできるのだろうか? それについては次の記事で答えたいと思う。
これら 6 つの要素、特に他人を助けたり、自分の仕事で成果を上げたりすることは、指針として役立つ—長期的に夢の仕事を見つける時目指すべきものだ。
以上を応用する最初のステップとして役立ついくつかのエクササイズを紹介したいと思う。
ここで挙げた6つの要素は、あくまで出発点に過ぎない。あなたにとって特別重要な要素が他にもあるかもしれないから、以下のエクササイズを行うことも推奨する。先に見たように、充実していると感じた時の記憶は当てにならないことがある。しかし、過去の経験を完全に無視するのも賢明ではない。これらの質問は、あなたが何に最も充実感を感じるのかについてヒントを与えるはずだ