LEEP(鉛暴露排除プロジェクト)の紹介
Charity Entrepreneurshipが設立を支援したした新しいEA(Effective Altruism)系組織、Lead Exposure Elimination Project(LEEP)の発足をお知らせします。 私たちは、世界的にも大変な疾病負荷となっている鉛中毒の削減を目標にしています。鉛含有塗料による鉛中毒の被害が拡大している国々で、法規制の徹底を唱えることによって、目標達成を目指します。
ここでは鉛中毒の削減を優先課題として扱い、その対策の概要についてご説明します。
私たちが属するEA(Effective Altruism)コミュニティ内では、かねてから鉛中毒への取り組みが社会へ大きな影響を与えるのではないか、という声が上がっていました。Effective Altuismでは、ITN の枠組み(Importance”問題の規模”− Tractability”取り組みやすさ”− Neglectedness”見過ごされている度合い”)を採用し課題解決に取り組んでいます。このことから鉛中毒の社会問題を優先し提言するに至りました。
鉛中毒は健康被害や経済的損失を生み出し、鉛を含む塗料はその主な原因となっています。1鉛暴露は個人にも多くの被害を及ぼします。低レベルの鉛暴露であっても、精神障害や知能指数の低下、精神疾患率の上昇などを引き起こし、また被害者の生涯の想定収入を著しく低下させる恐れがあります。更に、鉛中毒は行動の問題や犯罪、なかでも暴力犯罪の蔓延などに関わっています。成人に対して、腎臓への障害や高血圧や冠動脈疾患などを含む心血管疾患の重大なリスク要因になります。高レベルの暴露はすべての器官系に影響を及ぼし、結果として呼吸困難やけいれん・発作起こしたり、昏睡、死に至ることもあります。
鉛中毒は、特に子どもたちに影響を与えており、その被害規模は極めて大きいのです。ユニセフの報告によると、8億1 500万人の子どもたちから、神経発達への影響や知識指標の低下を引き起こすレベルである、血液1dLあたり5µg(マイクログラム)以上の血中鉛濃度が検出されています。6多くは低・中所得国の子どもたちです。言い換えると3人にひとりが鉛中毒による何らかの影響を受けていることになります。
障害を抱えることに加えて、鉛中毒は年間100万もの人々に死をもたらしています。DALY(障害調整生命年)は毎年2200万にも達し、これは世界の疾病負荷の約1%にあたることを意味します。7
鉛中毒により人々は収入減を余儀なくされることから、世界経済への打撃も大きく、年間でおよそ1兆ドル規模に及ぶとされています。これは世界のGDPの1.2%の損失にあたる数字です。また、これらの損失被害は低・中所得国に集中しており、それらの国々での損失がGDPの5〜8%にも達することから、鉛暴露は経済発展と貧困削減の大きな妨げとなっていることが示唆されます。
つまり、鉛中毒は重大な問題なのです。
現在、1つの国を除きすべての国が有鉛ガソリンを法律で禁止している一方、世界の61%の国々で鉛含有塗料の規制を行っていません。8これら低・中所得国の多くでは、鉛中毒による疾病負荷が未だに大きいのです。高所得国のほとんどは有鉛ガソリンや鉛含有塗料を法律で禁止しており、対策が進んでいる状況です。
IPEN, ToxicsLink, Pure Earthなど中低所得国で当問題に取り組む団体が存在する一方、鉛暴露による被害が大きい多くの国々で、問題が放置しされています。LEEPはこの差をなくすべく、問題が置き去りにされている国々をターゲットとしていきます。
鉛中毒の問題に取り組む上で、政策転換を促す事に成功できるかが最大の懸念です。しかし、鉛含有塗料の生産・輸入を禁止する政策転換を有利にする根拠もあります。
私たちの活動が生み出す社会的影響に加え、同じように政策提案に取り組む人々にむけて介入が実現可能であることを示すことができればと願っています。
介入の余地があり、問題による被害が大きく、また問題が放置されている国を確実にターゲットとしていくために国の選択を第一としました。その結果、マラウイを最も可能性のある国として選定しました。これより2ヶ月間、マラウイで販売されている新しい塗料に含まれる鉛の濃度を調査し、関係者や意思決定者らと関係を構築していく予定です。この期間で得られた知見やプロジェクトの進捗具合を基に、実際にマラウイで鉛含有塗料規制の導入へむけて動くか、他の候補地へ軸足を移すかを決定します。
私たちは、Effective Altruismの原則に沿って根拠に基づく政策変更へ声を上げながら、もし私たちが行動を起こさなかったらどうだったかと考えることで厳しく経過観察していきます。また、プロジェクトを進める中、鉛中毒問題(またはより広範的な意味での政策提言)に取り組む他の団体や個人が利用できるよう、調査結果のすべてをウェブサイトで公開していく予定です。
事前分析の結果、この問題介入は費用対効果が高く、現在GiveWellが推薦する優れた慈善事業団体の成果に匹敵する可能性があることがわかりました。鉛の法整備は健康問題や世界開発に取り組む多くの慈善事業団体と比べ、より高い費用対効果が見込まれます。
まずターゲット国とした国に注力していきますが、私たちの長期的目標は鉛による被害が大きい多くの国々で鉛規制を導入し、国家間レベルで鉛中毒を削減することです。
プロジェクトを支援希望される方は、以下をご覧ください。
現在、同チームはCharity Entrepreneurshipおよび、Fortify Healthの創業者より、指導・助言を受けていますが、引き続きアドバイザー(顧問)を募集しています。具体的には、鉛規制やその他の政策提言に詳しい専門家との繋がりを持ちたいと考えています。該当する経験をお持ちの方は、ぜひご連絡ください。
また、私たちの活動対象国において、現地での繋がりや経験をお持ち方をアドバイザーとして募集しています。対象国はマラウイ、マダガスカル、シエラレオネ、ブルキナファソ、グアテマラです。何らかの関わりがある方はご連絡ください。
プロジェクト始動後から1年の間、対象地域にて現地スタッフを雇用する予定です。プロジェクト運営、調査、コミュニケーションなどの職務でインターンシップ希望者やチームメンバーを将来採用する可能性もあります。
Charity Entrepreneurship より6万ドルの助成金を受け、初年度のプロジェクト運営費をほぼ賄うことができました。
今後さらなる資金調達を行う予定ですが、始動して間もない組織を支援してくださるリスクに寛容な人々との出会いをお待ちしています。
特に初期段階のプロジェクトにおいて、皆さまからのご意見やご提案は大変貴重です。ご質問やご意見は、お問い合わせフォームよりご連絡ください。
LEEPプロジェクトは、Effective Altruismの組織であるCharity Entrepreneurship下に設置され、6万ドルの活動資金を提供いただきました。現在のチームメンバーは、共同創業者のJack RaffertyとLucia Coulterの2名です。
この作品は、クリエイティブ・コモンズ表示4.0国際ライセンスの下でライセンスされています。